西宮のこころ 誕生ストーリー Vol.1

「心サブレ」は、今からちょうど10年前の2000年に、実は私の兄、「倉本 佳洋」が開発した商品です。ある日のこと、いつも通りに厨房で仕事をしているときに、兄はラジオからある面白い話を耳にします。それは、ドイツ製の某高級外国車の本社ビルの話です。その本社ビルは、いくつかの社屋から成り立っており、上空からその本社ビルを見下ろすと、全体の形が、ちょうど漢字の「心」の文字になっているという話でした。
そこからヒントを得た兄は、お菓子で「心」の文字を表現出来ないかと考えました。同時に、一つの疑問が湧いてきました…
毎日たくさんのお菓子を作っているけれども…、
「お客様が本当に求めているものは、何なんだろうか?」
「お客様は、お菓子そのものを贈りたいんだろうか?」
お客様は、単に「モノ」そのものを送りたいのではなく、お渡しする相手のことを思う「気持ち」を贈りたい…という確信が生まれました。そこで出来あがったお菓子のコンセプトが、『本当に贈りたいもの、それは「心」です…』
シンプルでありながら、ピュア(良質)な素材を用いた真っ直ぐな商品であり、 それでいてユニーク(他にはない個性がある)なもの。 伝えたい大切な「想い」も、固まりました。「よし、【心】を表すような良質なサブレを作ろう!」それが初めの一念です。

そう簡単には開発は進んでいきません。
「心」という言葉は、本来、そんなに軽く扱われるようなものではありません。贈り手の「心」を、代わりに表現するような、大切なお菓子… 名前が名前だけに、いい加減なものは作りたくありません。
「商品名に【心】という文字を入れるなら、当たり前の素材を使ったらあかん!」
「プロであろうが、専門家であろうが、誰に見てもらっても恥ずかしくないような、これでもかって言う最高級の材料のみを作って商品作ろう!」

最高のサブレ生地づくりは、困難を極めました。
ナッツで「心」の文字を描くというところまでは、アイデアが固まっていたのですが、生地とナッツのバランスが難しい。 お菓子の「味」はバランスが命です。どちらかが勝ちすぎても、いけません。 しかし、ナッツで文字を描こうとすると、どうしてもナッツが主張しすぎてしまい、全体の味が重たい…
試行錯誤を繰り返した結果、ナッツを一つ一つ、ナイフで半分に切って使うことによって、ようやくバランスが整いました。しかし、これで一手間も二手間も余分に手間がかかることになりました。「手間がかかろうが、原材料費が高かろうが、納得のいくものを作りたい!」改良に改良を重ね、2年ぐらいの試行錯誤の末に、ようやく納得のいく出来栄えのものが出来あがりました。

バターは、国産最高級と称される「カルピス社の発酵バター」をこれでもかというぐらいに贅沢に使用しています。主役のナッツも、クルミはフランス・グルノーブルから、ピスタチオはイタリア・シシリーからと世界中から吟味した素材のみを取り寄せ使用しました。
材料もさることながら、絶対に他店でマネできないと思った最大のポイントは、「全て、職人が一枚一枚手作業で、【心】の文字をナッツで描いて仕上げている」点です。
多くの著名なお店が、機械で大量生産している時代に、パティシエが一枚一枚手作業で仕上げている。 
これこそが、本当の意味での「心を込める(命を吹き込む)」、欠かすことが出来ない、大切な工程なのです。

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