西宮のこころ 誕生ストーリー Vol.4

何年か前、厨房で仕事をしている時に、ラジオ(FM802)から、郷愁を感じさせるようなスローバラードが流れてきました。
「平井 堅さん」が歌う、『キャッチボール』という詩でした。その歌詞が、子供の頃の私の記憶とフラッシュバックして、すごく心に響きました。出だしの部分だけご紹介します。

キャッチボール  (作詞・作曲:平井堅 / 編曲:梶野秀樹)
夕暮れの坂道を
大きな背中と歩く
グローブを抜いた左手
皮革(かわ)の匂いが残る
どんなに加減しても
あなたの球は速くて
逃げ腰の僕を茶化して
永遠に微笑んだ・・・・・

私が子供の頃は、お店をオープンして間もないということもあり、父は本当に忙しく、朝早くから晩遅くまで働いていて、ほとんど遊んでもらったという記憶がありませんでした。夕食すら家族揃って一緒に取れることがあまりなかったので、子供の頃は、「家族よりもお菓子が大事なんだ」って、よく思っていました。
そんな父でしたが、時折忙しい時間を割いて、兄と僕と一緒に遊んでくれたのが「キャッチボール」(野球)だったんです。あまり会話は多くなかったけど、唯一、父と触れ合える大切な時間だったように思います。 自分が親となり、守るべきものを持つようになって、その頃の父の思いが、少しは理解できるようになりました。「家族」を守るために、一生懸命働いてくれてたんだなぁって、今は感じています。

そんな、「キャッチボール」という父との思い出を、お菓子にしたのが、『想いdeキャッチボール』です。
このお菓子ができた経緯は、西宮市西宮商工会議所の皆さんからの働きかけにより、『あきない塾』という勉強会に参加させて頂いたことから始まります。 その勉強会で、武庫川女子大学さんと一緒に「西宮の逸品を作ろう」ということになり、『産学官民連携事業』というかたちで、商品の開発がスタートしました。 
商品企画、ならびにお菓子の製作・販売をベルンが担当し、武庫川女子大学・生活環境学科の皆さんに、パッケージデザインのご協力を頂くことになりました。
私は、「人それぞれの想いを、キャッチボールという形で受け継いで行くような、そんなイメージをお菓子にできたらいいな〜」と思っていました。そこで目を付けたのが、40年以上前、父が修行先の先輩から製法を教えてもらって、父なりにアレンジを加えて作った「マドモアゼル」というお菓子です。
父から教わったその「マドモアゼル」を、今度は私がアレンジして作ることにしました。そこには、父と私のキャッチボールという意味と共に、ベルンと武庫川女子大学の皆さんをはじめとした、たくさんの人々との「キャッチボール」そういう意味を込めたのです。

封を開けると出てくる銀紙の包みにビックリされるかもしれません。
昔ながらの特殊な製法そのままに焼き上げているので、口当たりがとてもデリケートなお菓子なのです。先輩〜後輩〜父〜私へキャッチボールされてきたレシピをアレンジ。
「自家製いちじくコンポート」を入れることで、新食感の逸品が誕生しました。

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